掠文庫『石川啄木詩集』
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■騎馬の巡査 NO.16
絶間なく動いてゐる須田町の人込の中に、 絶間なく目を配って、立ってゐる騎馬の巡査―― 見すぼらしい銅像のやうな――。 白痴の小僧は馬の腹をすばしこく潜りぬけ、 荷を積み重ねた赤い自動車が その鼻先を行く。 数ある往来の人の中には 子供の手を曳いた巡査の妻もあり 実家へ金借りに行った帰り途、 ふと此の馬上の人を見上げて、 おのが夫の勤労を思ふ。 あ、犬が電車に轢かれた―― ぞろぞろと人が集る。 巡査も馬を進める……
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