掠文庫『石川啄木詩集』
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■わが友は、今日も NO.25
我が友は、今日もまた、 マルクスの「資本論」の 難解になやみつつあるならむ。 わが身のまはりには、 黄色なる小さき花片が、ほろほろと、 何故とはなけれど、 ほろほろと散るごときけはひあり。 もう三十にもなるといふ、 身の丈三尺ばかりなる女の、 赤き扇をかざして踊るを、 見世物にて見たることあり。 あれはいつのことなりけむ。 それはさうと、あの女は―― ただ一度我等の会合に出て それきり来なくなりし―― あの女は、 今はどうしてゐるらむ。 明るき午後のものとなき静心なさ。
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